広い窓から見える景色はまだ暗く、私は背の高い椅子に腰かけ、その国の名産であるアップルマンゴーを朝食に食べていた。
一点を見つめ、その右手に蠢く肉の塊を無視するかのように・・・
薄暗い中、私は二個目に手を伸ばす、切れ味の悪いナイフが私を一層イラッとさせる。
手のひらに黄色の果汁が滴り落ちる。
そしてそれは私の黒のエナメルのレオタードにも流れ落ちた。
それでも私は食べ続ける。朝日が昇り始め、外が少しづつ黄金色に変わる。
「あ、マンゴーの色に似てる」そう私が日本語でつぶやいたとき、何かを私は思い出した。
なんだっけ?何かとリンクする・・・マンゴー??それとも朝焼けのガーデン??
少しだけ胸が締め付けられる。懐かしい感覚。
私は同時に2つのストーリーがこの状況にリンクしていることに気付く。
昔から私はよくフルーツを食していたのだが、その時期は確か初夏だったのか毎日マンゴーを食べ、
マンゴージュースを飲んでいた。
その日もプレイ前にマンゴージュースを一気に飲み干しプレイに行った。
射精前に聖水を欲しがるのが彼の性癖だった。
その日も私は躊躇することなくソレを施してやると彼は言った
「HIBIKIさん、今日マンゴーの味がするよ!!!」
私は驚いた。食で体臭が変わるとは聞いたことがあったが、体液の味も変わるなんて
この世界の遊びを知らなければわからないこと。
それこそ「あなたと私だけが知る究極の秘密」
今でも思う「今日は何を食べて何を飲んできたか当てて御覧」
フラッシュバックしたエロスに私は右側に蠢く肉の塊に目をやる。
黒のエナメルのロングブーツに必死にキスをする男にマンゴーの果汁を落とす。
「thank you mistress」
そう男は言い、更にしつこくブーツをなめる。
マンゴーを食べる私の口。ブーツに口づけをする彼の口。
同じ口でも役目が違うのは実に面白い。
いわゆる奴隷と呼ばれる男は地位も名誉もあるらしく、この大きな家で一人で暮らしている。
日本と違う高い天井。
大理石の床
緑の濃い芝生・・・
朝6時からのボンテージ・・・・
床に這いつくばる大きな異邦人。
全てが非日常。
さっきから何かもう一つのストーリーが引っ掛かるのはこの非日常の日常・・・
朝起きて窓を開けたら、芝の上を革の下着1枚で両手をトレー付の拘束具で固定され朝食を運ぶ男の絵が浮かぶ・・
あれはどこだっけ??
禁断のおとぎの国・・・
そうだ、この朝食の風景は、私が10年前に経験したあのおとぎの国の朝に似ている。
私たち女王は、この施設内では常にボンテージだった。
朝から革のドレスやラバーのレオタードを着た女王たちが朝食会場に集まり、
その傍らにいる奴隷はどこかしら枷をつけられ、誇らしげに女王の横に居た。
四つ這いで床の鉢で食べる者、女王と同じ高さの椅子で食べさせてもらえるが鎖で繋がれている者
ルームサービスを女王に届けるため手をトレーで括られてる者・・・・
私はその光景に感動し、奴隷といわれる本来は蔑まされる者たちの洗練された振る舞いに愛おしさを感じたのを覚えている。
そして今ソレに準じる光景が私の右下に居る。
私はソレにもう一度目をやる。
もう不機嫌さはない。
代わりに懐かしさに似た愛情を感じる。
私は違う足を差し出す。
代わりに男の頭の上に、さっきまで男が舐めていたブーツの底を押し付ける。
「Never forget me」
私の一言に男は「yes」と言い体を更に高揚させた。
別れ際、空港で男はこういった
「何年も前からずっと会いたかったんだ。ずっと君を想像してた。で今こうやって君と会話してる自分がいる。夢みたいだ!!想像以上に幸せだ」
私は照れながらニッコリ笑った。私は笑うと大きなエクボができる。それを見て彼は
「Pick up Girl」と叫んだ。彼曰く、エクボができる子は天国から地上に降りてくる際、神様が「コレ」って気にかけた子供をpick upして頬を摘まみ特別な力を吹き与えた子なんだって。
ふふふ、あまりに悪戯好きで神様にほっぺをギュッってお仕置きされた痕だったりして(笑)
神様、私の悪戯好きは貴方の甘いギュッでは治らなかったみたいよ。
今年はどれだけの殿方に愛を届けましょう…