昔あったよね?「死ぬまでにしたい10の事柄」って本がさ。
余命2か月と宣告されたら、あなたは何をする?
いや、そのリストに自分の名前が入っていたら、君は何を思う?
私が彼にあったのは2年前。
イベントに出演するためロンドンに滞在していた時。
「昔からすごくファンです。君がロンドンに来ると知って僕はとても興奮しています。
ロンドンまで行くので会ってくれれば幸いです。因みに僕はアニメのイラストレーターで将来、一緒に仕事ができればとも思ってます」
私が海外スケジュールをUPした途端、彼からそんなメールが来て、私はセッションや撮影の合間ならと簡単に約束をしたのだった。
私が借りていたマンションに1時間半もかけてきた彼。
今まで書き溜めたイラスト数点と自分が載った日本の漫画誌を持ってきたのを覚えている。
ずっと帽子を取ろうとしない彼を私は不審に思わなかったが、彼はその不貞を気にしているらしく、私たちにこう言った。
「実はガンを患っていて、抗がん剤治療をしたんだ。で、今はその副作用で髪が抜けちゃって・・
みっともないから帽子をかぶってる。だからこの僕の不貞を許してほしい」
私たちはそんなこと気にすることはないし、完治したならいいじゃんと言った。
半年後、再び私がロンドンに訪れた時も彼はロンドンまで来るはずだった。
でも当日になって、体調を崩し、医者からも止められたと連絡が入った。
私は、どうせ体の良い言い訳だろう。と特に気にも留めなかった。
再び彼から連絡が入ったのはそれから更に半年たった頃だっただろうか?
私がパリに行くことになり、それを知った彼からこうメールが入った。
「まだ医者から許可が下りなくて遠くにはいけないんだ。でも、君に自分が住んでる町を見てほしい。
パリからここまで立ち寄れないか?夏には日本に行けると思う。
その時はまた仕事を再開して君をキャラクターにした漫画を描きたい。その話も沢山したいんだ」
仕事の話なら・・・と私はスケジュールを見て飛行機に乗った。
BrightonというSMなんて無縁そうな小さな港町。
彼は、一生懸命観光案内をしてくれた。
私には、どこがドクターストップなのかわからないくらいだった。
ただ、途中から脂汗をかき始め、小さな小瓶に入った液体の薬を飲みながら歩いていたのは気になったが・・・
夕方からはアフタヌーンティーを楽しむ予定だった。しかし彼の体調はドンドン悪くなり、
1度かかりつけの医者に診てもらって、もしOKが出たら、予定通りアフタヌーンティーをしようと言って別れた。
小さな小瓶にはMorphineそう書いてあった気がする。「Pain killer?」と聞いたら、モルヒネの1種だといわれた。
1時間半後に連絡する。そういった彼は見る見るうちに容態が急変しタクシ-で去って行った。
3時間後、私たちは再び会い、無事アフタヌーンティーをした。
彼の生い立ちを聞きながら彼も何事もなかったようにスコーンを頬張っていた。
その後、彼の仕事場兼自宅へ行き、私の顔をいろんな方向から写真を撮ってイラストを描いた。
写真だとわからない角度があったのだという。
小瓶に入った液体は、まだ彼の手元にあり、栄養ドリンクみたいに飲んでいた。
ボンテージだけど乳首があらわになったイラストを「君だ」と言われ、ヌード写真はどこにもUPしてないのになんで書けるんだと皮肉たっぷりに一言いう。
帰りがけに今度イギリスに来るときは、僕の部屋を使ってくれと言われた。
彼の部屋にあったコレクションの数々をお土産にもらった。
駅までのタクシーの中で「2日後からまた病院なんだ」といっていた。
なんとなく靄がかかったような気持ちになったが、癌になっても完治する人もいるので気に留めなかった。
クリスマスにカレンダーを送ったら病床から写真が来た。
年明けには、怖い、痛いと弱気なメールが来た。
春に、機会を作ってロンドンの病院にお見舞いに行ったら元気を出してくれるかな?とも思ったけど、
そこまで深く主従関係を結んだ個人奴隷でもないので、少し考えていた。
最後のメールは1月の末。ロンドンでSMやってる人を紹介してって・・・
わかったよと答えて内心「春になったらやっぱり行ってやるか」とフライトチケットを調べていた。
ある日、SNSを開いたら彼のページがUPされていて沢山の人がコメントしてた。
悪い予感。。。目を通すと「痛みから永遠に解放された」って書いてある。
えっ?こないだロンドンの女王様紹介してってメールくれたじゃん!
メールを読み返す。
よく読んだら、「来週最後の手術をするんだけど80%見込みないんだ」って書いてあった・・・
「実は君に最後に会った時も体調わるかったんだよね」って。
君はきっと知ってたんだね。余命2か月って・・・
だから最後にしたいことをやり尽くしたのか、もしくは信じたくなくて未来の話ばかりしていたのか・・・
最後に言ってたよね
「君がこの町に来てくれるなんて、本当に夢みたいだ」って・・
OLを捨てて、女王という仕事を選んで、時に自分の存在理由に疑問を抱き
「私は何のために踏ん張っているんだろう」と自答することもあった。
でも、あなたが私に言ったこの言葉、忘れないよ。
恥じることなく正々堂々表現し、存在し、1人でも多くの人に見つけてもらえる存在になりたい。
そのために、もっと活動の場を広げるよ。
今度は天国で会いましょう。
だから私が生き切るまで待っててね。
あなたがもし余命2か月と言われたら、あなたなら何をする??
私がもし余命2か月と宣告されたら・・・
いつも通りに過ごして、最後の日まで仕事して最後に鍵をポストに投函するかな。
猫みたいに死に際は見せないの。